書評:鈴木道彦『マルセル・プルーストの誕生』

4.0
7. 文芸評論
※ 画像をクリックするとAmazonの商品ページに遷移します

プルーストにおける徹底した自己表現とその普遍化

本著が発刊された2013年は、マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』が刊行されてちょうど100年というメモリアル・イヤーであった。

この佳節に、日本を代表するプルースト研究者であり、『失われた時を求めて』の全訳も完遂した経歴を持つ鈴木道彦先生の文芸評論が刊行されるとは、ファンとってはこの上ない喜びであった。

本著では、プルーストの持つ「普遍性」が強調される。徹底的に自身と向き合い、自身を表現するという個別性が、普遍性に至るというのである。

喘息、ユダヤ人問題、エディプス・コンプレックス、同性愛、等々。

これらは全てプルースト個人の問題群として出発しながら、作品ではより一般的な生のあり方を問うものに昇華されている。

であるが故に、主人公は普遍性を体現しておらねばならず、無名の一人称(「私」)でなければならないとされる。

※『失われた時を求めて』の主人公が、名もなき「私」なのか、それとも「マルセル」という名なのかという点は、大きな論争の種になっている。

読者がプルーストを読むとき、あたかも自身を読むかのような感覚に陥るのは、そこに普遍性があるからだろう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました